rekokin's room


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最新ブルーグラス・バンジョー(楽器)事情

 はっきり言って、「間違っている!!」。どんなバンジョーを持っても、「いい音」を出す人はいい音を出し、いい音を出せない人は、どんなにいいバンジョーを持っても「いい音」は出ない。音楽は楽器で創るのではなくて、人が創るのでアール。……なーんて、身も蓋もないことを、音楽雑誌編集長が言ってしまっていいのだろうか? ただ、「いい音」のバンジョーは、確かに存在する。しかもバンジョーの場合、組み立て楽器であるがゆえに、「いい音」にすることもけっこう簡単なんだ。
 ここに、関西で「ハーベスト・ムーン」と「千日前ブルーグラス・アルバム・バンド」というふたつのバンドで活躍するバンジョー奏者がいる。昨年春、発表されたハーベスト・ムーンのアルバム『In The Wind』(レッドクレイレコードより好評発売中!)で、3本のバンジョーと5個のトーンリングを駆使したという彼、「レコキン」というニックネームを持つ小野田浩士さんの『最新ブルーグラス・バンジョー事情』を聞いて見よう。……すべてのはじまりは、「何がいい音なのか?」を、自分が知ることではアール。


文/小野田浩士


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「本体編」


 プリウォー・ギブソン・バンジョーをメイン楽器とする著名なプレーヤーも、ツアー用のセカンド楽器(飛行機移動の預け荷物対策など)には、さまざまなブランドのあたらしいモデルを使用する場合が多い。プリウォー・ギブソンよりもマンション……、と考えてしまうわれわれがバンジョーを購入する際の参考に出来る。

●ギブソン(GIBSON)
http://www2.gibson.com/Products/Acoustic-Instruments/Banjo/Gibson-Original.aspx

 ご存知、ブルーグラス・バンジョーの本家本元。
1987年にプリウォー・モデルを再現したリイッシュー・シリーズをリリース以降、ふたたびブルーグラス・バンジョーのトップランナーに復活。現在、戦後定番のRB-250のほか、Style 1、Style 5、RB-3、RB-75、グラナダなどの戦前モデルのほか、定価5万5千ドルという「スーパー・アール」を含む各種「アール・スクラッグス・モデル」や「J.D.クロウ・モデル(Black Jack)」などのアーティスト・シグネチャー・モデルを擁する。昨年のIBMA見本市に出展しなかったり、身売りの噂が出たりと、ちょっと心配な兆候も……。

●ステリング(STELLING)
http://www.stellingbanjo.com/

 1975年、アラン・マンデが「スタッグホーン・モデル」の第2号機で世界中のバンジョー奏者に衝撃を与えて以来、ギブソンに次ぐブランドとなったジェフ・ステリング氏が手塩にかけて育てたステリング・バンジョー(1974年設立)。ギブソンのマスタートーンとは異なる独自の構造から生み出されるビッグトーンの評価は、今でも揺ぎない。ドン・レノが晩年愛用したのをはじめ、一時、ソニー・オズボーンのスペックで「サンフラワー」を開発したこともあり、またビル・エマーソンもエンドースしているように、バンジョー・マスターたちが認める個性に人気があるようだ。近年では、トニー・パスのブロック構造「オールドウッド・リム」採用が話題で、以前はステリングと言えば「重い」というイメージだったが、最近のモデルは軽くなったという未確認情報も……。

●ディーリング(DEERING)
http://www.deeringbanjos.com/

 ベラ・フレックやアリソン・ブラウン御用達のソリッドボディのエレキ・バンジョー「クロスファイアー」や、トラベル・バンジョーとして知られる軽量の「グッドタイム」バンジョーなどでも知られるディーリング社。1975年にグレッグとジャネットのディーリング夫妻が創立(ムーンシャイナー誌1999年9月号より引用)。2007年12月に来日したエディ・アドコックが「ゴールデン・エラ」、昨年3月に来日したトニー・トリシュカが「テンブルックス・サラトガ・スター」モデルを愛用しているほか、シグネチャー・モデルにはジョン・ハートフォード、イェン・クルーガー、今春来日したテリー・バウカム、またクロウハンマーのマーク・ジョンソン、デビッド・ホルトなどがある。また近年、1880年以来の老舗バンジョー・ブランド「ベガ(Vega)」を獲得、ロングネックの「キングストン・トリオ」モデルなどを発表している。

●ネックビル(NECHVILLE)
http://www.nechville.com/

 1997年に来日したアリソン・ブラウンがツアー用として持ってきたのがこのバンジョー。トム・ネックビル考案の画期的なヘリ・マウント構造については1997年5月号のムーンシャイナー誌でも取り上げられていたので詳述はさけるが、ヘッドやネックの調整が非常に簡単で、その構造上軽いというのも特徴のひとつ。次世代をになうバンジョーとしての期待は大きい。くらま楽器が日本の代理店だ(ムーンシャイナー誌1999年9月号引用)。1989年に中西部ミネソタ州で創業。愛用者には、ベラ・フレックをはじめ、パンチ・ブラザーズのノーム・ピケルニーやキャディラック・スカイのマット・メネフィーなど超絶テクニシャンがそのプレイアビリティーが話題の「ネクスター」モデルに名を並べていることに注目したい。そのほか同社のリストには、有田純弘やレオン・ハントという日英を代表するプレイヤーも名を連ねている。その革命的な構造やデザインを評価するのは革新的なプレイヤーが多そうだ。

●ヒューバー(HUBER)
http://huberbanjos.com/

 ビンテージ・フラットヘッド・トーンリング開発ブームのはしりとして「ヒューバー・トーンリング」で名を成したスティーブ・ヒューバーが、自身のリングを使って戦前ギブソン・マスタートーンの完全再現を目指し2001年に創業、ナッシュビル郊外のヘンダーソンビルに工場がある。学生時代からボブ・ペイズリーのサザン・グラスやポール・アドキンズでバンジョー奏者として活躍、同時に機械技師しての経験を活用して戦前のフラットヘッド・トーンを生み出す秘密を探ったという。現在、ランカスター、バークシャー、カラマズー、ロアノーク、レキシントンの各モデルのほか、シグネチャー・モデルには、サミー・シーラー、ジム・ミルズ、ロン・ブロック、クリス・パンドルフィなどトッププレイヤーのモデルを擁する。

●オズボーン・チーフ(OSBORNE CHIEF)
http://www.sonnyosborne.com/

 ソニー・オズボーンの伝説的バンジョー"Chief"(1934年製ギブソン・オリジナル5弦グラナダ・バンジョーのニックネーム)をモデルに、ソニーとトム・ビグス、ウイン・オズボーンらがプロデュース、1998年以来ソニー自身も使用したバンジョー。現在はフランク・ニートのネック、コックスのリム&リゾネータ、ブレイロックのトーンリングを装着、ギブソン社との意匠問題でトレードマークのグラナダのハーツ&フラワー・インレイが使えなくなって、独自のデザインを採用した以降も、ビル・エマーソンやグラスカルズのクリスティン・スコット・ベンソン、ビル・エバンス、そして日本では稲葉和裕らが愛用している。

●ニート(NEAT)
http://frankneat.com/

 レプリカ・ネックといえばこの人……、と言っても過言でないフランクと、息子リッキーのニート親子の作り出すカスタム・バンジョーは見事に戦前ギブソン・マスタートーンを再現している。マイケル・クリーブランド&フレームキーパーの若き名手、ジェシー・ベイカーが愛用。1971年から自宅に工房を持ちネック作りや修理をはじめ、1976年からラルフ・スタンレーの勧めで「スタンレートーン」の製作を開始している。その間、戦前5弦バンジョーよりも多く出回った4弦のテナー・バンジョーを5弦ネックに付け替え、数多くの5弦コンバージョン・バンジョーを生み出している。修理調整でもJ.D.クロウやソニー・オズボーンをはじめ多くの著名なバンジョー奏者を世話してきている。「スタンレートーン」のほか、レイモンド・フェアチャイルド・モデルやリトル・ロイ・ルイス・モデル、また前出のオズボーン・チーフバンジョーも実はニート・バンジョーが製作している。

●ウイリアムズ(WILLIAMS)
http://www.williamscustombanjos.com/

 超高級(高価?)トーンリング、バーライル・リングのほか、100年以上前の工場床材を再利用したサリバン・オールド・フロアー・リムや、戦前ギブソンの構造をフルコピーしたスティーブ・ギル・リゾネーターなどのこだわりパーツを贅沢に用いたケニー・イングラム・モデルで有名。ネックはベテランのトミー・ボイドやディーン・オズボーン、若手のダニエル・グラインドスタッフらが使用する「ハットフィールド・バンジョー」の製作もするアーサー・ハットフィールド。

●ケル・クロイドン(KEL KROYDON)
http://www.americanmadebanjo.com/

 アメリカン・メイド・バンジョー社がリリースするブランドで、そのケル・クロイドンは1930年代、ギブソン社がシアーズ・ローバック社との提携で製作したブランド名。ダニック・トーンリングを装着。チャーリー・クッシュマンやビル・エバンス、ロンダ・ビンセント&レイジのアーロン・マクダリス、ディキシー・ビーライナーズのケーシー・ヘンリーなど著名なトッププレイヤーのモデルを擁するほか、新世代のバンジョー・クリエーターのひとり、ウェス・コーベットもエンドースしている。
●イエーツ(YATES)
http://www.yatesbanjos.com/
 ウォーレン・イエーツが設立。ダン・ティミンスキ・バンドのロン・スチュワートが開発に参加したロン自身のソリッドプレイに呼応するシグネチャー・モデルが話題。またドニー・リトルとともに開発した「WL5」というワイドネックのバンジョーは、5弦がそのままペグヘッドのナットまで延びいおり、カポをするだけでどんなキーにも対応でき、なおかつあたらしい和音やフレーズが可能になるという、まったくあたらしい発想のユニークなもの。

●サリバン(SULLIVAN)
http://sullivanbanjo.com/

 1960年代後半にバンジョーを作りはじめ1970年、バンジョーパーツを主に扱う楽器店「ファースト・クォリティー・ミュージック(First Quality Music)」をサイドビジネスとして創業したビル・サリバン、1980年代にはあらゆるパーツを扱うようになり、会社を辞めてフルタイムで楽器店に専念、2000年に「サリバン・バンジョー・カンパニー」を立ち上げた。スタンダード・シリーズのグリーンブライアー・モデルほかには、オプションでウィリアムズで紹介したサリバン・オールド・フロアー・リムを装着することが出来る。現在、老舗のバンジョーパーツ取次店としての経験をいかした高級モデルの「サリバン・ビンテージ35(V35)」を開発中だという。エンドーサーにはジャック・クック、マーク・プルエット、マイク・スコットらベテランのほか、グレース・バンホフという若い女性バンド、デラ・メイのバンジョー奏者もいる。

●レコーディングキング(RECORDING KING)
http://www.recordingking.com/

 1930年代、モンゴメリー・ウォードのためにギブソン社が製造したブランド名を獲得したグレッグ・リッチ(1987年のギブソン・リイッシュー・シリーズの立役者)がプロデュース。コストを抑えるための中国での生産には、デザートローズ・バンジョーのスコット・ズィママンが技術指導したんだとか。本場米国製に負けない品質をお手軽な価格で提供するというコンセプトで、最近は、ソニー・オズボーンと協同プロデュースした「オズボーン・スカウト(Scout)」モデルが話題。ロビー・マッカーリーやボビー・オズボーン&ロッキートップ・エクスプレスのダナ・カップらも使用している。本誌広告でおなじみのホスコが輸入代理店をつとめている。

●ゴールド・トーン(GOLD TONE)
http://www.goldtone.com/

 1993年、ウェインとロビン・ロジャーズ夫妻がフロリダで創業。トラベル・バンジョーの成功からはじまったようにリーズナブルな価格帯でバンジョーからさまざまなブルーグラス系楽器の販売をしている。また6弦のギター・バンジョーに「バンジター(Banjitar)」とネーミングしてギタリストへの浸透を図るほか、チェロ・バンジョーや10弦バンジョー(12弦ギター発想)など、ユニークな製品を開発するなか、チェロ・バンジョー「CEB 5」はベラ・フレックとアビゲイル・ウォッシュバーンをはじめ、ティム・オブライエン、トニー・トリシュカやボブ・カーリンなど、そのユニークなトーンに高い評価が寄せられている。

●ゴールドスター(GOLD STAR)
http://www.sagamusic.com/

 カリフォルニアに本拠、米国とアジアを結ぶ老舗のブルーグラス・サポーター、サガ・ミュージックがリリース、バンジョー奏者でもあるオーナーのリチャード・ケルドセンがJ.D.クロウの協力を得て立ち上げたブランド。伝説の日本国産バンジョー、トーカイ「T-1200R」シリーズの流れを汲み、トム・アダムスが1981年製のGF-100Wモデルを愛用しているほか、有田純弘や渡辺三郎が2005年にリニューアルされた現在のゴールド・スターを使用している。
●デザートローズ(DESERT ROSE)
http://www5f.biglobe.ne.jp/~desertrosebanjo/
 日本製バンジョーで孤軍奮闘。製作者は、30年以上に渡り世界トップメーカーの最前線で弦楽器製作に携わり続けてきたスコット・ズィママン。日本国内のみならず本場米国でも高い評価を得るトニー・パスのブロック構造「ロストティンバー・リム」を採用している。


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「パーツ編:トーンリング」


 1930年代のプリウォー・ギブソン・マスタートーンに搭載されていたフラットヘッド・トーンリングをフルコピーしたタイプのリングが依然人気。これらのリングにはそのサイズに、あたらしい一般的なバンジョーのリムに対応したコンパチブルサイズと、1930年代のプリウォー・リムのオリジナルサイズに対応したロングスカート・サイズが存在するので、自身のバンジョーに乗せ換える場合には注意が必要です。専門店やルシアーのアドバイスを受けることを強くお勧めしたい。

●クリシュ(KULESH)
http://www.richardkulesh.com/

 プリウォータイプ・トーンリングのさきがけといえばコレ。1987年に創業した父リチャード・クリシュのあとを継ぎ、現在は息子リチャード・ジュニアが製作、すでに2万本以上が出荷されているという。ビンテージ20ホール・リングが最新商品。ギブソンのアール・スクラッグス・モデルほか、ワイルドウッド、ビッシュライン、カーティテス・マクピーク、ケル・クロイドン、フィリップ・フォンテーンほかのメーカーも使用している。

●ヒューバー(HUBER)
http://huberbanjos.com/

 バンジョー・プレイヤーのスティーブ・ヒューバーが1998年、彼の所有する1939年製のRB-75のトーンリングをコピーして作ったリング。メッキも当時の製法を再現し、自社で製造しているとか(ムーンシャイナー誌1999年9月号引用)。自社のバンジョーにはもちろん、4千本以上のバンジョーにインストールされたという。昨年のIBMAで発表されたHR-30が最新モデルのようだ。

●ブレイロック(BLAYLOCK)
http://www.blaylocktonering.com/

 オズボーン・チーフやニート・バンジョーに搭載されたことで有名になったプリウォータイプのトーンリング。標準はロングスカート・サイズ。最新のJ.D.クロウ「ベアトラックス」モデルのトーンリングが人気。

●ダニック(DANNICK)
http://www.americanmadebanjo.com/dannick.php

 アメリカン・メイド・バンジョーのトム・ミリソラが、プリウォー・リングをマサチューセッツ工科大学に持ち込んで成分を徹底分析させて、それを最新設備で再現したリング。20ホール・フラットヘッド・トーンリングのほかに、アーチトップ・トーンリングや、チャーリー・クシュマンの提案により開発したノー・ホール・フラットヘッド・トーンリングなどをラインアップしている。

●バーライル(BURLILE)

 現在のプリウォータイプ・トーンリングの中で最高額のリング。映画で用いる恐竜ロボットの技術者だったジム・バーライルが、UCLAの図書館で借りた技術書からインスピレーションを受けて、1930年代のギブソンマスタートーン用のトーンリングを作っていた「Kalamazoo Tank & Silo」社の鋳造工程を忠実に再現し、作り出したリング。値段もさることながら、ジム本人とコンタクトを取らないと買えないのが難点(前出のウイリアムズ・バンジョーを通じると入手できるらしい……)。


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「パーツ編:ウッドリム」


 これまた、1930年代のプリウォー・ギブソン・マスタートーンに搭載されていた3層構造の「スリー・プライ・リム(Three-Ply Rim)」が主流ながら、独自のブロック構造のものや、100年以上前の木材を用いたものなど、選択の幅が広がってきた。

●コックス(COX)
http://www.coxbanjos.com/

 一般的な3-ply構造のリムで、育ちの遅い北国育ちのメイプル(Northern Rock Maple)材を使用。パーツとして入手できるリムの中で最もポピュラーで、かつ品質も期待できる。

●トニー・パス(TONY PASS)
http://tonypassbanjorims.com/

 米国の五大湖の固定に沈む100年以上前の原生木材を用いて、独自のブロック構造で作り上げられるロストティンバー(Lost Timbre)ブロック・リム。最初はステリング・バンジョーに採用されて世に広まったが、リーズナブルなコストでプリウォー・サウンドが再現できると人気が高まる。2003年に発表したリム上部は通常の厚みだが下部を薄くしたシンスカート(Thin Skirt)というリムが現在の通常商品。リムを厚い板で叩くとより高い音がすることに気付き、ある程度の重量を確保しておけば、薄い木の方がより低い周波数でも共鳴することから生まれた斬新なアイデアだという。

●サリバン(SULLIVAN)
http://sullivanbanjo.com/

 100年以上前の木材が用いられていた米国北部の古い廃工場の床材を再製材したロック・メイプル材から作られた3-ply構造のリム(Historic Old Growth Factory Floor Wood Rim)が好評。


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「パーツ編:リゾネータ」


 プリウォー構造が主流ながらも、使用材料に微妙な違いが……。

●コックス(COX)
http://www.coxbanjos.com/

 ウッドリム同様に、パーツとして入手できるリゾネータの中で最もポピュラーで、かつ安定した品質が期待できる。背板にポプラ材の合板を用いたプリウォー構造ながら、側板はメイプル材を使用。

●ギル(GILL)
http://www.gill-mfg.com/

 モダン構造とプリウォー構造を用意するが、注目は後者。背板のみならず、側板にもポプラ材とメイプル材の合板を用いて、1930年代の構造を完全に再現する


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「番外編:Dチューナー」


 アール・スクラッグスが1952年に考案した2弦と3弦を素早くチューニングダウンして、オープンGチューニングからDチューニングに変える道具。アールの名曲「Flint Hill Special」や「Earl's Breakdown」を弾くには必須のアイテム。通常のチューニングペグを付け替えるタイプと、別にカム(Cam)機構を持つペグを加えるタイプに大別される。

●キース(KEITH)
http://www.beaconbanjo.com/

 チューニングペグに組み込まれた2つのネジで高・低それぞれの音程を設定し、ペグ自身を回すことによってチューニングを変える仕組み。メロディック・スタイル奏法の創始者として有名なビル・キースが1964年、友人のダン・バンプとともにある日の午後、数時間でデザインしたというもので、発売以来もっともポピュラーなDチューナーとしてすでに3万セット以上が出荷されているという。

●シャーラー(SCHALLER)
http://schaller-electronic.com/hp121089/Startseite.htm

 構造はキースDチューナーとほぼ同じだが、セット後にペグボタンの角度を自由に変更できないところがキースとは違う。

●チーターキー(CHEAT-A-KEYS)
http://www.fotmc.com/cheat-a-key.htm

 カムによって弦を屈曲させてチューニングを変更するタイプながら、ペグヘッドに穴を開けずに取り付けられる画期的な構造。1960年代後半以降、ペグ自身にその機能を持たせたキースDチューナータイプが主流だが、従来のペグヘッドに穴を開けて装着するカム式とはやっぱり「感じ」(スピード感)が違う。この音がすばやく上下する感じを、ペグヘッドに穴を開けないで再現しようとしたのがこのチーターキーというわけ。取り付けが簡単だが、2弦のペグを回す方向がキースとは逆となるので、キースになれた人にはちょっと辛いかも。2007年にクリス・シャープ・バンドで来日したジョージ・バックナーのプロモーション以降、日本にも徐々に浸透中。

●アグリー(UGLY)
http://www.sonnyosborne.com/UglyTuners.html

 1950年代にジョニー・ウィズナントが作ったものをソニー・オズボーンが改案した、自称「醜い(ugly)」なもの。前出のチーターキー同様に、ペグヘッドに穴を開けずに取り付けられるカム・タイプのDチューナー。ペグボタンを回すのでなく、レバーを引く/押すという方法も独創的で、2つの弦を同時にチェンジすることも可能だが、チーターキーに比べると取り付けに手間がかかるのが難点。

●フーパー(HOOPER)

 1950年代のアール・スクラッグス同様に、ペグヘッドに穴を開けて装着するオーソドックスな構造。ミズリー在住のジョージ・フーパー作。この使用感は、やはりペグヘッドに穴を開けなければ得られない……のか!?

●バーライル(BURLILE)

 伝説のバンジョー・グル、カーティス・マックピーク所有の、これまた伝説のバンジョー「Ole Betsy」に装着されているウォルト・ピットマン作のカムタイプ・Dチューナー(アール・スクラッグスも60年代に使っていた)を、前出のバーライル・トーンリングの作者、ジム・バーライルが完全再現。チャーリー・クシュマンも、彼のステージでのメイン楽器、1933年製 PB-3 オリジナル・フラットヘッドに装着その使用感たら……"Great!"


ムーンシャイナー誌2010年8月号・9月号掲載

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