recokin's room



クリス・シャープ&デビッド・ロング with ジョージ・バックナー(ケビン、御免...)


count from 2007/4/12

2007年4月6日、兵庫県芦屋市で開催された芦屋川桜祭りに行ってきました。
この日のお目当ては、特設ステージのワールドミュージックフェスタに出演する、来日ツアー中のバンド、クリス・シャープ&デビッド・ロングバンドです。

Chris Sharp : guitar
David Long : mandlin
George Buckner : banjo
Kevin Kehrberg : bass

○ クリスと再会して「顔わかります」と言われて...

特設ステージは芦屋川の河川敷に設置されており、我々観客は、川を挟んだ対岸から観ることになります。ステージの正面に陣取り、前のバンド(学校の大先輩のバンドです...)を観ていたら、ステージ左横のテント(多分控え室...)からクリスが出てくるのが見えます。特に、関係者以外立ち入り禁止となっている様子でも無いので、ちょっくら挨拶に行くことにしました。

5年前に彼が初来日した際に、徳島のステージでバックを務めたことがあり、その際のビデオをDVDに焼いて送ってあげたことがあったので、私の顔は覚えてくれてたようです。その上、彼は日本語がわかるのにもかかわらず、英語で挨拶しなければとテンパってた私は、「顔わかります」と流暢な日本語で話すクリスに向かって「ナイスツーミーチュー、マイネームイズ...」と必死に挨拶したのでした(^^;とほほ


○ ジョージに熱心に「Steamboat Whistle Blues」のチョーキングを教えてもろて...

デビッド、ケビンとも挨拶して、最後に噂のジョージです。今回のツアーマネージャでもあるマイミクの歳さんが一緒におられたので、通訳をしてもらい、ジェスチャー無しでも比較的円滑に意思疎通が出来ました。(はい、普段は外国人さんとはジェスチャーで会話します!?)

このツアーで彼が使うバンジョーは、予想通り、歳さんからの借り物のRB-3でしたが、いつもの音と違うので質問すると、ブリッジだけは彼が持参した、彼の友人が古いベッドから切り出したメイプル材によるハンドメイド品に取り替えているとのこと。なるほど、ブリッジって音を決めたり、また右手のフォームを維持する上でも肝心なアイテムなんですね。

「弾いてみるかい」ということなので、彼の目の前で私の注目曲「Steamboat Whistle Blues」のブレイクを弾いた所、彼は凄く嬉しそうな様子。そこですかさず「このチョーキングのところのモコモコした音が良くわからない」と聞くと、彼は丁寧に教えてくれました。ミソは、右手の腹で5弦を軽くミュートして、チョーキングの合間にモコっとした音を入れていたのです。

他にも、ブレーク最後の、オクターブ離れたFの音で、普通なら1弦の15フレットと4弦の15フレットとか、3弦の10フレットで弾きそうな音を、わざわざ離れた2弦の6フレットで味のある音を出しているとか、応用曲として「Crawdad Song(Crawdad Hole)」のブレイクを弾いてくれたりしましたが、なんとその熱心なこと。「そろそろステージのスタンバイじゃないの?」と僕が言っても、まだ弾き続けるので、こちらが心配になったくらいでした。


○ 渋ぅ〜くてご機嫌なステージ観て...

肩の力が抜けていて、非常に余裕のある演奏ながら、そのリズム・タイミング・テクニックは超絶でした。


○ 大体の曲は聞いてるけどサインが欲しくてCD「Lucky」買うて...

演奏後のCD販売も好調のようで、ブルーグラス畑じゃない一般のお客さんの多い中でも結構売れてたと思います。彼らがRed Cray Recordsからリリースした「Tipton Hills Boys/Lucky」は、なんやかんや(?)で多くの曲は聴いていたのですが、彼らのサイン欲しさに僕も買いました。
で、皆にサインしてもらったのですが、デビッドだけはズ〜っと女の子と話していてサインを貰えずじまい。まぁ、彼には前回の来日の際の北陸フェスで彼の1stCDにサイン貰ってるからいいかっと。

で、よくよくCD「Lucky」を見てみたら、デビッドは参加してませんでした...


○ クリスの日本語を直して...

クリスがステージのMCで「ありがとうございます〜ぅ」のように語尾を伸ばすのを聞いて、一緒に観ていたマイミクのねばりんさんと「まるで女の子みたい」と腹を抱えて笑ってました。(クリス、御免...)

CD販売もひと段落したところで、彼にそのことを話して、「男なら語尾はきちっと切る事」「じゃないと、女言葉と言うよりも、オ○マと間違えられるよ」(クリス、またまた御免...)と指摘すると「うそ〜、恥ずかしい〜っ、オ○マはいやだ〜ぁ」と相変わらず語尾を延ばしてました。

オ○マのこともちゃんと知ってたのには驚きました(^^;が、彼の話によると、奥さん(日本人です...)のお母さんが米の彼の家を訪ねてきた時、1日目は何も言わなかったのですが、2日目になって、「クリス、『いやだ〜ぁ』はオ○マ言葉だからやめなさい」と指摘されたそうです。実は彼の日本語の先生は奥様なので、彼女の口癖「いやだ〜ぁ」がすっかりうつっちゃったんだとか。語尾を延ばすのも奥様の影響なんですよね。
明日からは、しっかりと男らしく「ありがとうございます」と語尾は切ると言ってました。その成果は、翌日の奈良で確認(注2)することにしましょう。


○ サブさんの教え子(なんと小5!)とジョージの競演を観て...

ジョージがステージ横のテント(出演者控え室)に行こうと引っ張るので、ついて行きました。(ココからの彼との会話は、ほとんどがジェスチャーです...)どうやら、BOMサービスのサブさんがバンジョーを教えている小さな女の子を連れてくるので、その演奏を観てやって欲しい、と頼まれていると言うことらしいのです。

しばらく、ピックのことやら、お互いの手の小ささ比べ(注1)を話していたら、サブさんご夫妻が、教え子の女の子とそのお母さんを伴ってやって来ました。
女の子は小学校5年(今年で6年生と言ったかも...)で、この3ヶ月ほど、週1回サブさんにバンジョーを習っているとか。では早速何か弾いてね、ということになのですが、彼女はピックを持っていない。サブさんのピックでは大き過ぎるし...で、僕のピックを貸して上げたら、案の定ピッタリ...(T_T)/~

彼女はジョージの前で「Cripple Creek」や「Foggy Mt. Breakedown」など5曲を演奏しましたが、ビックリしたのは「Turkey In the Straw」をちゃんとメロディーを拾って弾いたこと。これにはジョージもビックリ!で、サブさんは鼻高々でした。
ジョージからのアドバイスは、「これからも今までどおりに練習して、弾き続けてね」でした。

しかし、3ヶ月で5曲、それも「Turkey In the Straw」って、サブさん、ペース早過ぎとちゃう!?


○ ジョージとクリスに「右手の奥義」のレクチャーを大マジメで受けて...

「奥義」はかなりオーバーな表現でしたが、要するに右手のフォームによる音の出し方(弦のはじき方)についてのお話です。
なお以下では、指先から第一関節、第二関節、根元が第三関節と表現しています。

サブさん達が帰った後は、また二人っきり。何か共通の話題は...と言うことで、先日発売されたF&SのTVショー・ベスト盤DVDを観て、アールの右手が「Beautiful」だとか、やっぱりヘッドには薬指と小指の2本の指を付けなければいけないか?とか話していると、ジョージは、一度片付けたバンジョー(アウターケースまで付いてるのに...)をまたケースから取り出しました。
そして自分の右手を示して、薬指と小指の2本の指が自然なアーチ状になること、ヘッドには軽く触れる程度で、アームレストに肘をしっかりと固定することで右手を安定させること、人差し指と中指は第二関節だけを曲げて弦を弾く、第三関節は極力曲げない、第一関節は力を抜くこと等を丁寧にレクチャーしてくれました。

 

初めて聞く内容では無かったのですが、本場のミュージシャンからマンツーマンで教えてもらえるなんて、なんとも感動モノです。

しかし、私は元々から「2本の指をヘッドに付ける」ことと「人差し指と中指は第二関節だけを曲げる」ことが出来ないのです。「やってみて」とバンジョーを渡されても、なかなかうまく出来ない私に対して、ジョージの顔がドンドン真顔になっていくのがわかります。また、どうも彼は指の形だけではなく、弦の弾き方自身のことを言っているようなのですが、如何せん、そんなことまではジェスチャーや片言英語では伝わるはずがありません。

そうこうしていると、いつの間にやら横にクリスが座ってました。今までに見た事も無いような真剣な面持ちの彼は「この感じを覚えなきゃダメ」と言って、人差し指を一本立てました。
そしてその指を軽くアーチ状にして、指先を机の角に突き立てました


それをグーっと押し当てて、第二関節を深く曲げて、第一関節を反対方向に反らしました


 

そして、ピンッと指を弾きました


...のように私には見えました。この動作を、彼は何度も繰り返しました。
「この感じで、弦を(ヘッドに対して)横じゃなくて、縦に振動させるんだ」

ジョージが教えてくれた右手のフォームは、この指の弾き方、つまり弦の弾き方を生み出すためのものだと言うことなのです。前述のとおり、指の関節の使い方も知ってましたし、また弦の振動方向による音の違い(注3)も知ってはいたのですが、この二つの話は繋がっていたのですね。
「こんなことも知らなかったの?」と笑われるかもしれませんが、その時の私はまさしく「目から鱗が落ちる」状態でした。

前述のとおり、私にとっては前からわかってはいても出来ない右手のフォームなのですが、憧れの二人から、こうも真剣且つ解り易くレクチャーして貰ったからには、チャレンジせぬわけにはいきませんわなぁ...

【追加脚注参照】


○ 明日の奈良での再開を約束して...

そのうち、ツアマネの歳さんが来られて「明日の奈良で、また会いましょう」と超個人的即席ワークショップは終了となりましたが、ステージ上のウエストコースト・バンドの「Teach your children」を聴いて「この曲のタイミングは完璧です」と言ってステージを観に行ったりしてる間に、いつの間にか二人は消えてしまいました。

レコキン「彼らはどこに行ったんすか?」
歳さん 「釣り(fishing)に行くと言ってた」
レコキン「いったいナニを釣るの?」
歳さん 「女の子らしい...」
レコキン「...」

ちなみに年齢を聞くと、クリスは「25才」ジョージは「26才」と頑なに言い張ってました(-_-)/~




(注1)
自慢じゃないけど、僕の手は女の子並みに小さいのですが、ジョージが「僕の手は君並に小さいんだ」と言うので比べてみると、本当に彼の手もほぼ同じ大きさ...これはいろんな意味でかなりショックでした。
「手の小ささはハンディーじゃないよ。要は練習さ。」
はい、仰るとおりでゲス(-_-;
でも、指の太さは、彼の方がかなり太かったです...


(注2)
翌日の4月7日に奈良県桜井市で開催されるDeepSouthPickin'Partyにもクリスたちはゲスト出演する予定になってました。


(注3)
ヘッド(ギター等では表板)に対して弦を平行(横方向)に振動させると弦の音が、垂直方向(縦方向)に振動させるとボディーの音がするというお話。
一般的に「楽器の音」とされるのは後者と思われます。
(ネットでもこの話題は結構出てきます...)


(追加脚注)
十数年前に、米の音楽雑誌(多分FRETS誌)でのEarl Scruggsのインタビューを手前味噌で訳した文がPCに残ってました。
かなりの意訳なので、ここに掲載しても特に問題ないでしょう。
Georgeたちの言ってることが正しいと言うことがわかります。

*****

右手のテクニックというのは練習を要します。
長年バンジョー弾きがいろいろなやり方で手を支えているのを見ていますが、「正しい」方法というのはありません。
あなたがやっている方法が正しいのです。
私は掌をつかむようにしています。そうすると、バンジョーのヘッドにほぼ平行になります。
掌に近いところの関節より下の指の部分を掌とほとんど一直線にしています。
その関節より上の指の部分は、他のプレーヤーと同様に曲げています。
角度が鋭いので、弦がフラットになるようにピックを曲げます。
指もピックも余り曲げないでピックと弦が同じ角度になるようにしているプレーヤーもいます。
私のピックの動き(ほとんどは指の動き)は大きな指の関節の後で生じますが、ピッキングして動くのは指先の2つの関節だけです。

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